アイスリボン177でGENTAROvs真琴のシングル戦が決まった。
この20日あまり真琴のアイデンティティを揺さぶり続けた"存在力"論争。
その答えが見出せるかどうか、難しいテーマを背負った一戦。
試合について考える前に、まず事の発端と経過を順に整理してみるところから始めたい。
"存在力"という言葉が生まれたのはアイスリボン172の座談会だった。
真琴がDDTオールナイト興行で試合をしなかった安藤が週プロに大きく扱われた事への悔しさを吐露。
すると、GENがこう言う。
『違うんだよ、あいかちゃんはな、プロレスしてるんだよ。
存在がな、プロレスしてるんだよ、既に。
(中略)
存在感、、存在感じゃないな...、存在感じゃない。
存在力だね、存在が持ってるパワーだな。
どれだけ"私はここにいます"っていうのを、お客さんにも、周りにも巻き散らかせるかっていう。 』
"存在力"とは、周囲を巻き込むアピール力である事が既に語られている。
その場では何事も無く収まったかに見えたが、翌週の大会で真琴が安藤に宣戦布告する。
『安藤さんの言う存在力というのに、絶対自分は負けたくありません。 』
同時に"存在力"論争の火付け役であったGENをそのパートナーに指名。
この時、GENが真琴に返した言葉をいくつかピックアップしてみたい。
『存在力はこいつ(安藤)は勝ってるよ。だけど、お前別にそんなもんで勝たなくていいんじゃないの?お前は普通にプロレスで勝ってるからさ。 』
『正直に言ってやろう。お前には最近、存在力が全くないなぁ。
確かに、お前にはこのリングにいる意味があんまり感じられないなぁ。』
『(コスプレで目立っているという真琴に)大丈夫か?色んなものに手出して、レスラーとしての色が消えちゃえば、それでお前終わっちゃうぞ。 』
最もキーになるのは、"最近"としている点だと思う。
それから1週間、自身の存在を否定されるかのような厳しい言葉にプライドを傷つけられながら、"存在力"について苦悩する真琴がいた。 おはようニュース内や三田英津子さんブログのコメント欄で、その想いが語られている。
誰も明確な答えを持たず、"存在力"という言葉がやや独り歩きを始めた中で迎えた板橋大会、vsGEN&安藤戦。
過去に例が無いほど感情を剥き出しにしてGENに向かっていった真琴。
溜め込んできた怒りや憎しみを他の誰よりも深く、リングに刻みつけたと思う。
ここでも、試合後のGENのコメントを週プロモバイルから引用してみる。
『アイツは今頃ある意味、むちゃむちゃ甘やかされてダメ出しされなくて、ちやほやされてちょっとプロレスっぽい事をできるようになったら評価の対象になった。
(中略)
周りもそれを許してきたから、それで面白かったかもしれないけど、大きな勘違い。
真琴は物珍しい無気力ファイターの貯金でやってるようなものだから。
最近、都とかが台頭してきて取り残されてる。アイツにテーマを与えなければ中堅になっている。
真琴もアイスを背負って立ってる事は間違いない。』
ようやくプロレスラーとして認められつつある真琴に対して一定の評価は下しながら、自身の観点から見て足りないものをはっきりと突きつけている。
無気力ファイターの貯金でやってるようなもの、というのは痛烈な言葉だ。
真琴の場合、スタートラインはズバ抜けてマイナスだった。
そこから成長してきた、プロレスラー真琴の成長ストーリーは、線で観ればオリジナルで真似の出来ないもの。
彼女がデビューしたばかりの頃、現在のようにトップクラスの選手と戦えるようになると誰が思っただろう。
そこには誰が何と言おうと揺るがない、真琴の努力と成長の悦びが詰まっている。
何度かブログで話題にしてくれた奈苗さんを始め、プロレスラーとしての正統進化を評価してくれる人もいる。
一方で、点として観た場合の個性が見えづらくなっている部分は確かにあると思う。
類まれな弱さを個性として脚光を浴びた経緯があるが故、周囲と同じくらいのラインに立った現在の姿を個性が薄れたと感じる人間も多いだろう。
また他団体の同世代と比べて、なかなか業界全体での評価を得られていないのも、過去からの偏見が根強く残っているからではないか、と思っている。
真琴本人とファンレベルでは軸となっている三田英津子さんとの関係というテーマも、三田さんが引退された事によって表舞台で取り上げられる機会は大きく減った。
では、成長して周囲に追いついた真琴が、一歩抜きん出るために打ち出せる個性とは何か?
今回の抗争で投げかけられている問いを、一言でまとめるなら、恐らくこういう事だと思う。
現在の真琴の魅力が何か?と問われたら、自分はこれまでの成長過程と、それを成し得た強い精神力を挙げる。
元々それぞれの下地があったマッスルビーナス達の成長速度に比べたら、真琴が現在の位置にたどり着くまでのスピードはゆっくりに見えるかもしれない。
それでも折れることなく成長を続けてきたのだから、方向性さえ見失わなければ時間がかかっても進める。
そう思っていた事も、自分がファンとしてフィルターをかけていたから、と現在は感じる。
実際はもっとシビアで、瞬間的に興味有る無しの判断がくだされる。
内面性まで知りたいという本当の意味でのファンの裾野を広げていくには、彼女がプロレスラーとして注目を集め、その一瞬に引っかかるファンを増やす事は不可欠。
必要な一目で観るものを引きつけ、言葉なしでも個性を伝えられるインパクト。
これまでは"普通"に成り上がる事で評価を受けてきた真琴が、この先"普通"に成り下がらないための武器。
板橋大会の前、GEN&安藤戦をターニングポイントになるかもしれないと言ったのは、その武器となるヒントを真琴が掴めるのではないかと思ったからだ。
ただ、実際の試合を見て、そこまでは至らなかったと感じた。
真琴は確かに凄まじい気迫を見せた。
けれど、自分の感覚ではあの感情は元々、真琴の中にあったものが解放された結果だと思う。
次の方向性を切り拓くほど突き抜けるためには、あと一歩、何か。
真琴自身が自分の個性について悩んでいる状況で、それを生み出すのはとても苦しい作業だと思う。
もし見つけることが出来れば、きっと大きな力になるはず。
自分の真琴ファンとしての視点が甘いと言われたら、そうだと思う。
プレイヤーでもない自分に出来るのは、ただリングの外から声をかけ続け、何があっても目を離さずに応援を続けること、それしかない。
けれど変な話、ファンとしての自分の想いが満たされるかどうかには、あまりこだわっていない。
真琴が内に秘めた野望と夢を叶えるために必要ならば、変化を恐れる事なく先に進んで欲しい。
行く先がどんな道であっても彼女を支えていこうと、腹に決めた上で真琴ファンになった。
彼女がふと振り返った時、少しでも後ろ盾になっていられるとしたら、それで本望。
真琴が、何万人、何十万人という人々へ夢を与える存在になる事を思い描きながら、これからも応援し続けます。
まずは現在。
現状を打破して、一皮剥けた魅力を身に着けられるように。
ガンバレ!
こう言うことしか出来ないけれど、本当に、心から。


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